アニメ映画「ジョゼと虎と魚たち」感想

アニメ
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田辺聖子の原作をKindleで読み終わった(ほんの15分で読める)。

「なんじゃこりゃ! アニメ映画は一体どっからあんな設定に改変したんじゃ!」と言いたい。

まるっきり別物じゃんこれ…。

まず、原作とアニメ映画で共通するのは、ジョゼが美人で小さくて気難しいことくらい。「絵が上手い」なんて秀でた才能は、アニメのジョゼにしかない。

恒夫も恒夫で、メキシコに行って夢をかなえたいといった熱のこもったキャラ設定はアニメの恒夫だけ。原作の恒夫は、おっとりしていて、すでに学生同士の異性経験もある。

しかもふたりはセックスもしている。深い愛情とかからじゃなく、何となくその場の成り行きで。

そのまま二人は、だらだらと実質的な夫婦関係を作る上に、ジョゼからするにそれもいつまでも続くものとは考えられていない。

要するに、障害者とのセックスや恋愛が、ふたりの間だけでタブーどころか空気のようになっている。素晴らしい! 対等じゃん!

アニメ映画の方の、ジョゼの「健常者には分からん」からの恒夫の交通事故や、恒夫がリハビリを拒否したりそれをジョゼが手助けして回復させるというストーリーは、原作を読んだ後だといかにも若い恋人たちに受けそうな、薄っぺらいものに感じてしまう。

でもねぇ…、「好奇の目や明確な悪意にさらされる障害持ちの女性であろうが、健常者と対等な恋愛はできるんだよ」といった主旨の若者向けラブストーリーを見せたいんだったら、アニメ映画はそれはそれでいいものだったと思いますよ。「ジョゼと虎と魚たち」を原作にしていなければ…。

それでも納得がいかないのは、ジョゼに絵描きの才能を足したこと。普通の障害者は、普通の健常者と同じく、そんな秀才は持ってない。ここに臭いものを感じてしまうんだよな…、いかにも「貴重な障害者」といった色づけがされていて、都合が良すぎると思う。

もうひとつは、「文春オンライン」の記事にもあった通り、原作のジョゼのアパートの2階にいる「お乳房(ちち)さわらしてくれたら何でも用したる、いうてニタニタ笑いよる」気色悪いおっさんが消えてることかなぁ。障害者にもいろいろいるけど、体目当てで近寄ってくるもんを嫌悪するのは基本健常者と変わらない。そういった、車椅子を突き飛ばす人間と同じくらいかそれ以上に悪意に満ちた存在をなくしたのは、やはりアニメ映画ならではの限界かなと思う。実際いるものがいないとされるのはエンターテインメントにはよくあること、といえばそれまでかもだが…。

あ、Blu-ray買いました。タペストリー付きです。ジョゼ、色っぽいね。

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