題材は理想的だったが映画としては…?半ルポ映画「Winny」

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●あらすじ(映画.comから引用):
ファイル共有ソフト「Winny」の開発者が逮捕され、著作権法違反ほう助の罪に問われた裁判で無罪を勝ち取った一連の事件を、東出昌大主演、「ぜんぶ、ボクのせい」の松本優作監督のメガホンで映画化。
2002年、データのやりとりが簡単にできるファイル共有ソフト「Winny」を開発した金子勇は、その試用版をインターネットの巨大掲示板「2ちゃんねる」に公開する。公開後、瞬く間にシェアを伸ばすが、その裏では大量の映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、次第に社会問題へ発展していく。違法コピーした者たちが逮捕される中、開発者の金子も著作権法違反ほう助の容疑で2004年に逮捕されてしまう。金子の弁護を引き受けることとなった弁護士・壇俊光は、金子と共に警察の逮捕の不当性を裁判で主張するが、第一審では有罪判決を下されてしまい……。
金子役を東出、壇弁護士役を三浦貴大がそれぞれ演じるほか、吉岡秀隆、吹越満らが脇を固める。

(C)2023映画「Winny」製作委員会

当時実際にWinnyを使っていたし、弁護団へ寄付もしたことがあるので、どんな出来なのか半分不安に思いつつも見に行った。

16:25開演、広島バルト11シアター6。
(余談だが、隣のシアター5では「トップガン マーヴェリック」のリバイバル上映をしていた。せっかくのMX4Dのシアター6だからこっちでやればいいのに、と思った。)

観客は25人ほど。たいがいは壮年男性だったが、ミニスカートを履いた若い女性や杖をついた高齢女性もいたのは意外だった。東出昌大めあてだろうか??

登場人物の役名は実名ばかり。これは半分はWinny裁判のルポルタージュであり、半分は金子勇という人物の一生を描いた映画である。

あまり俳優には詳しくないので、金子勇氏役の東出昌大が「寄生獣」の島田だったことにしばらく気付かなかった。小太りな金子氏を演じるにあたって体重を18kgも増量したとのこと。かなりの熱の入れようだ。

エンドロールに重なって流された、無罪確定した金子氏へのニコニコ動画のインタビュー映像が、東出がそれまで演じていた金子氏とシームレスにつながって見えた。それくらい東出の演技力は大したものだった。

内容としては、法廷闘争を主にしたもので、Winnyとその暴露ウイルスによる社会的影響に関しては、さほど重点が置かれていない。金子勇という、天才プログラマーかつ世間知らずで子供のような人物、そして彼を支えた壇俊光弁護士をいかにドラマチックに再現するか、に徹したものであった。

満天の星空に、プログラミングに、ビル街に沈む夕日に、低空をロールする飛行機に目を輝かせる金子氏。

喫茶店で、メロンソーダのアイスを頬張りながら無邪気に「捜査官が作った誓約書をそのまま書き写しました、後で訂正すれば済むと思ってたので」と弁護士に明かして彼をがっかりさせる金子氏。

彼は正に少年の心を持つ、悪く言えばプログラミング以外にはほぼ能のない子供のような男だった。

映画は、罰金150万円の一審有罪を言い渡されても、「まだ続きがあるじゃないですか」と晴れやかな金子氏の笑顔ののち、唐突に7年後の金子氏の葬儀場に場面転換する。


結局、京都府警サイバー犯罪捜査部や「その上にいるもの」がどういう意図で金子氏を著作権法違反ほう助の疑いで逮捕したのか(著作権法違反は本来それを犯され損害を受けた当事者の親告罪である)、なぜ何としても金子氏を有罪にしたがっていたのか、それが謎のままで物足りなかった。

「『出る杭は打たれる』と言うが、杭を打つには杭を支える人、槌で打つ人、そして指示を出す人がいる…」。これは弁護団のひとりであったベテラン、秋田弁護士の作中のセリフである。そこを具体的に見たかったな…。


壇氏をはじめとする弁護団と金子氏との交流や、法廷でのやり取りを想定して練習しながらのシーンが実際の丁々発止と重なる部分はよくできていて面白くはあったが、さらにその後の、高裁と最高裁で無罪判決を勝ち取ったくだりも欲しかった。「ルポルタージュ作品ではありません。そこは別に調べてください」、というのなら、少々残念な気もする。

「Winnyによる度重なる極秘情報流出」の原因は、Winnyのせいというよりも暴露ウイルスによるものであるというのが正確なのだが、それを「これじゃWinnyが悪ってことになるじゃないですか!」との壇氏のセリフひとつで終わらせられたのは不親切だ。
Winnyを使っていたもの達にとっては常識であっても、背景をまったく知らない観客にはそれが通じていたのか、あやしいところだ。


また、愛媛県警の裏金作りを勇気を出して告発した仙波(せんば)元巡査部長は、それを全面否定されたし、Winnyによって県警の内部資料が流出した後にも、何者かに脅迫すら受けていた。
Winnyに無関係ではないにしろ、彼の人生もドラマチックで波乱であり、その後が描かれなかったのも尻切れトンボだと感じる。


私が毎月980円も課金して楽しんでいる音楽配信サイトSpotifyは、Winnyと同じくP2P技術を利用している。
また、私が日々適当なことをつぶやいている「Mastodon」は、Twitterのように中央サーバーを持っているわけではない「分散SNS」である。(開発者のドイツ人Eugen Rochkoは、Mastodonを23歳の時に発表している…。)
分散SNSの技術やP2P技術の詳細は、技術者ではない私には分からない。(2005年にAmazonで初めて購入した物品、金子勇著「Winnyの技術」は、18年経った今でもちんぷんかんぷんだ。)

結局のところ、映画の魅力的題材になるのは、先端技術ではなく、人物、たとえば「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」(ベネディクト・カンバーバッチ主演)のアラン・チューリングのような特異な存在なのであろう。
Facebookを創業したザッカーバーグを扱った映画「ソーシャルネットワーク」は未見なので、この勢いで見てみたい。


それにしても、NEC PC-8001実機から「マイコン」「月刊アスキー」等の実在した資料まで、よくも集めて作ったなと感心はした。


Winnyに関する話は、2004年に金子氏逮捕直後に開かれたオフ会でもしている。

Winny作者逮捕について考える広島オフ

(ここで出された意見全てを私が述べたわけではないが)

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