2009年作品で、日本で公開されたのは翌2010年。今はもうなくなった映画館で鑑賞ずみ。
監督のダンカン・ジョーンズは、デヴィッド・ボウイの息子です。
U-NEXTで再度視聴。ネタバレ感想です。
資源が枯渇した近未来の地球に恩恵をもたらしたのは、すぐ隣にある月。
豊富な燃料を機械で掘り出しては地球へと送り出す単調な仕事を、サムは3年契約でたったひとりで請け負っている。
ある日、掘削機を点検しに月面車で向かった彼は事故を起こす。
ベッドに寝かされたサムが見たものは…。
彼がベッドに寝ている時点で、「あれ? 右目の上にできたはずの傷がないぞ」と気付いてからは、予想通り。
サムは徹底したコスト削減をめざす会社の方針で月に配置されたクローン人間だったのです。
事故に遭ったサムA(としておきます)の代わりにサムBが目覚めさせられました。
サムBがサムAを救助したことから、今までうまくいっていた歯車が狂いはじめます。
「俺が本物だ、お前は誰だ!」と対立が起こるのは当然。
どちらも本物なのだから、わけがわからなくなります。殴り合いのケンカもします。
卓球で勝負したらAがBに大差をつけたり、Aが大事に作っていた街の模型をBがひっくり返したり。クローンなのに個性があらわれている2人のサム。
しかし、負傷がひどかったサムAは、すべてのカラクリが明らかになった時点で「お前が地球に帰れ」とサムBを後押しします。
そんなサムAを気づかうサムBは、救助隊の目くらましにサムCを目覚めさせてAの最期を看取り、会社が建てた通信妨害アンテナを破壊して、燃料ロケットで地球に帰還。
サムが法廷で証言したことで世間からは会社への非難がごうごう、株価は暴落するのでした。
どうでしょう。移植されたものとはいえ同じ記憶を持つ『自分』をこんなに思いやるというのは、はたしてサム以外の地球人にできるのでしょうか。
私なら、利己心からもうひとりの私を押しのけてまで地球に帰ろうとするかもしれません。
秘匿メモリ領域に保管されていた過去の自分たちの記録を見た上で、平静でいられるかどうか。
愛する妻はとうに死んでいて、赤ん坊だった娘は15歳に成長しており、あちらにはオリジナルの自分がいると知ったのだから、そりゃどうしたって地球に帰りたくなるでしょう。
しかし、サムAとサムBはそうしなかった。自分でありながら自分ではない相手を思いやる気持ちというのは、長くて孤独な月での生活から生じたものなのでしょうか。
正確に言うと、サムは完全な孤独ではありませんでした。「ガーティ」と呼ばれる無骨なロボットとともに3年の月日を過ごしていたのです。
このガーティがまた、かわいいんですよ。モニターにスマイリーマークを表示させているのはグッドデザイン賞ものですね。まるで感情を持っているかのような気分で接することができます。
秘匿メモリにログオンするパスワードを入力してくれたり、自分のメモリを解析されたら会社にことがバレてしまう、メモリを消して私を再起動してくれ、とも言ってくれる、サムのベストパートナーでした。
何もかも忘れたガーティがサムCの目覚めを世話したのち、ガーティやサムC、まだ目覚めていない予備のサムたちはどうなるんでしょうね。
つくづく、資本主義どっぷりの会社ってひどいなぁ。
イギリス映画なので英語なのですが、時々韓国語やハングルが出てきます。なぜ韓国なのか、意図はわからないものの、宇宙が国際的なものとなっているんだなとイメージさせるには十分でした。
あと、この作品は音楽がじつにいいです。それもお楽しみに見てください。
