君だけでゆけ、未来へ~「アリスとテレスのまぼろし工場」

この記事は約3分で読めます。
Sponsored links
この記事はアフィリエイト広告を利用しています。

すこし前のアニメですが、「アリスとテレスのまぼろし工場」をご紹介します。

Netflixでしかみられないらしいのが残念です。隠れた良作。映画館で3回も観てしまいました。

1年近くも前の作品なので、ネタバレ全開でお送りしますね。

◼️

見伏(みふせ)という製鉄の町が舞台です。


突然、製鉄所が爆発。

それ以来、町に住む人たちは、外界から隔絶され変化することを禁じられた「まぼろし」の世界で生きることを強いられます。


廃工場から龍のごとき巨大な雲「神機狼(しんきろう)」がたちのぼっては、ときどき住民を食って消します。
なので、住民たちは、いつかは現実に変えれると信じて、間違いなくもとに戻るために「自分確認票」を定期的に書くよう義務付けられていました。


主人公は内気で絵を描くのが得意な14歳の少年、正宗(まさむね)。彼は自分確認票に「嫌いな人=クラスメイトの睦実(むつみ)」と書いては提出せずにいました。


睦実に誘われて製鉄所へ連れて行かれた正宗は、幽閉されている野生の少女、五実(いつみ)に引き合わされます。


彼女の世話をするうちに、正宗の中に変化が生じます。

『五実を外の世界に戻してやりたい』。


五実はじつは、将来産まれるはずだった正宗と睦実の子なのでした。
正宗の思いは、この変化を禁じられた世界で通じるのでしょうか…?

(C)新見伏製鐵保存会

ブラウン管テレビ、ラジカセ、ガソリンはリッター127円、ヒット曲はKAN「愛は勝つ」、女子中学生たちはブルマーを履いている。

そんな1991年から止まったままのまぼろしの町。


五実は、現実世界からやって来たイレギュラーでした。
はじめは5歳だったのが、成長して正宗たちと同じ歳くらいまで成長しています。つまり、現実は工場の爆発以来10年ほど経っていたことが分かります。

よく「好きと嫌いは紙一重」と言います。

正宗の「嫌い」は「好き」の裏がえし。彼は睦実が気になってしょうがなかったのですね。思春期にありがち。
睦実は当初から五実が自分と正宗との間の子と知っていました。睦実もまた、正宗が気になっていたのです。


何といっても、たぶんアニメ映画史上「最長のキスシーン」が白眉。
雪が舞い散る中での、止まらない熱い熱いキス。

(C)新見伏製鐵保存会

このまぼろしの町における「好き」「希望」とは何でしょう。

(C)新見伏製鐵保存会

「この町で、変化は悪」。
希望や夢を抱いた人は、神機狼に飲まれ次々と消えていきます。

アリストテレスの言葉が引用されます。
「希望とは、目覚めている者が見る夢である」。

理想の生き方に目覚めたものは消される。哀しい町ですね。

EDテーマ曲「心音(しんおん)」を歌うのは、あの中島みゆきでした。しかも、この映画のための書き下ろしです。
岡田磨里監督が「当たって砕けろ」の思いで中島みゆきに依頼したところ、快諾されたとのこと。中島さんは付箋を貼るほど脚本を読み込み、「岡田様を崇拝しております」とまで言っています。

最後には、正宗と睦実たちの活躍で五実は現実世界へ返されます。ひとりぼっちになるけど、そうすることが父母のためになる、と弱い頭で理解した五実が、貨物列車に乗ってワーワー泣き崩れ…。

そして、大学生に成長した五実=沙希は、まぼろしの両親が住んでいた製鉄所跡を訪れます。イレギュラーな沙希がいなくなったことで、まぼろしの町も草ボーボーの廃墟になっていました。

父が初恋の相手。そしてもう会えない。でも、満足げな表情でじっとたたずむ。エンド。

◼️

刺さる人には刺さる映画です。

「この世界の片隅に」などを手がけた制作会社MAPPAの、初の完全オリジナル作品。

あまり評判はよくなかったようで、Blu-rayも出ていません。

見たい方は、Netflixにてどうぞ。

Follow me!

Mastodon PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました