美しい女性同士の恋愛映画「キャロル」

この記事は約3分で読めます。
この記事はアフィリエイト広告を利用しています。

●あらすじ:
1952年冬のニューヨーク。クリスマス商戦のさなかのデパートで、おもちゃ売り場の店員テレーズは、娘へのプレゼントを買い求めに来た婦人キャロルに目が釘付けになった。美しい金髪、情熱的な赤い唇、高級なミンクのコート。たまたまキャロルが忘れた手袋を返す口実で、テレーズは彼女に手紙を書く。お礼に、と一度キャロルから会食に誘われ、徐々に二人の仲は深まる。テレーズに自分はいま夫ハージと離婚調停中だと告白するキャロルは、自動車での西へのふたり旅を提案する。恋人のリチャードからの求婚に乗り気になれないでいたテレーズは、その誘いに乗る。しかしその先に待っていた罠は…。

(C)The Weinstein Company


●登場人物:
・キャロル:美しい上流階級の婦人。テレーズと知り合い、仲を深める。夫ハージとの間で離婚調  停を抱えており、娘の親権を争っている。
・テレーズ:高級デパートで働く若い女性。写真を撮るのが趣味。偶然キャロルと知り合い、その魅力に惹かれていく。
・ハージ:キャロルの夫。二人の仲は冷え切っており、言い争いが絶えない。
・アビー:キャロルの幼い時からの友人。以前キャロルに体を許した関係でもある。
・ リチャード:テレーズの恋人。彼女に結婚を執拗に迫る。

●感想:
とても美しい映画である。街並みから服装、小物に至るまで細かに再現された50年代のアメリカ。喫煙の習慣。キャロルとテレーズの何気ない視線のやり取りと手を肩に置く等のしぐさ。そして、「貴婦人と町娘」と言っていい社会的立場を超えた二人の愛。
旅の途中で二人は結ばれる(このレズビアンシーンのため、PG12である)が、それはキャロルの不貞の証拠としてハージにつかまれてしまった。アビーに帰りを送られる途中で、傷心のテレーズはキャロルからの手紙を彼女から受け取る。「貴方は若いから解決や説明を求めるでしょう。でもいつか分かる時が来る」。人生の酸いも甘いも嚙み分けた中年女性の、若い娘への励ましと取れた。
写真は撮るものの人物を被写体にするのはためらっていたテレーズは、旅の途中で思わずキャロルにシャッターを切る。写真仲間に「とてもいい、内面をよく捉えている」とのちに褒められ、タイムズ紙への転職も果たす。これはテレーズの成長を示すエピソードであろう。
ラストシーンで、キャロルと久しぶりに会い、「家を売って仕事も始めたの。あなたの部屋もあるのだけど…どうかしら?」と誘われ、いったんは断るテレーズ。しかし別のパーティーへ行ったもののそこを抜け出し、キャロルのいる所へ駆けつける。そんなテレーズを、キャロルは謎めいた笑みで迎えるのだった。たとえ夫との仲が破局しようと、愛した人が男性の恋人でなく身分違いの年上の女性であろうと、「人生は自分のもの」を貫いた彼女たちは美しいと思う。

当時のアメリカでは同性愛は法律で禁じられており、キャロルもそうであったように心理療法士による治療が必要とされていたようだ。今では考えられないほどアメリカが保守的であった時代である。実は本映画の原作者のパトリシア・ハイスミスも、1952年に発表した際には別名義を使っていたほどである。(30年後にやっと公表した。)
映画全体を包むくすんだ色調は、あえて16mmフィルムで撮影したためでもあるらしい。
なお、原作者のパトリシア・ハイスミスは映画「太陽がいっぱい」(主演のアラン・ドロンや音楽で有名)の原作者でもある。

キャロル役のケイト・ブランシェットとテレーズ役のルーニー・マーラは、本作品により第88回(2016年)アカデミー賞にダブルノミネートされ、ルーニー・マーラは第68回(2015年)カンヌ国際映画祭で女優賞を獲得した。

Follow me!

  • X