役所広司がカンヌで最優秀男優賞を受賞したとのことで、興味を持って見に行きました。
主人公の平山さんは、都内の公衆トイレの清掃がお仕事。
おばあさんが道路を掃く音で目覚め、歯を磨き、口ヒゲを切りそろえ、育ててる木に水を吹きかけ、支度をして玄関を開け、空を見上げてほほえんだら、自販機で缶コーヒーを買って現場へとクルマを出す。
首都高速を使って公園をめぐり、汚れたトイレをぴかぴかに清掃。
いつも通う神社で、鳥居の下できちんとお辞儀をして境内に入り、ベンチで惣菜パンを食べ、フィルムカメラで木もれ日を撮る。
明るいうちに帰宅。
なじみの銭湯に一番乗り。
なじみの飲み屋で何も言わなくても出てくるいつもの酒とつまみを味わう。
なじみのコインランドリー、なじみの古本屋。
なじみの写真屋で、現像した写真を受け取って新しいフィルムをカメラに装填。
帰宅したら、年月で分けたお菓子の缶に写真を整理して、押し入れにしまう。
夜は、部屋の灯りを消して、老眼鏡をかけて読書灯で文庫本を読み、適当なところで眠くなって寝る。
とにかく、毎日なじみのことが繰り返されます。
しかしだからといって、毎日がすべて同じというわけではもちろんありません。
隣のベンチに、自分とおなじように惣菜パンを食べている見かけない女性がいるとか。
家出してきた姪の突然の訪問とか。
朝のルーチンの中で、唯一、車内でカセットを選ぶときだけ、(どれをかけようかな?)と一瞬迷ってる平山さんがいいですね。
音楽のない映画ですが、平山さんの車内のカーステレオから、70~80年代の音楽が流れます。
中古アナログショップで、数千~1万円で売れるカセットテープ。
チャラい若者の同僚が「売って金にしましょう!」と言っても手放しません。その代わりに金を貸してやります。
カセットを知らない世代が「いい音だね」と言ったり、「iPhoneに入れられるかな? Spotifyにある?」と聞かれると、「それどこの店?」と返す平山さんがいい…。
銭湯で鼻まで湯に浸かってるところ。
その日見たことを思い出して、きっと湯の下でほほえんでるんだろうなぁ~。
ラスト、平山さんが三浦友和に言うセリフが、意外だったけどよく考えるとしっくりきました。
平山さんの日常は、毎日違うんですね。PERFECTな一日一日が訪れているのです。
監督は知らない人だったので、調べてみたらびっくり。あの「ベルリン・天使の詩」を作った人だったんですね! 驚きました。
後世に語り継がれる映画になる予感がします。
広島サロンシネマ2で鑑賞。
ちょうど1階のハンズで古本市をやっていたので、平山さんじゃないですが、適当に見つくろって買って帰りました。
気分がほっこりする映画でした。見に行ってよかった。