人生のほろ苦さを甘い音楽でくるんだ映画「ラ・ラ・ランド」

映画
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まず、冒頭のミュージカルシーンで圧倒されましたね。ごくありふれた高速道路の渋滞を映しているのかと思いきや、急に女性がクルマから降りて歌い踊り出し、周りの人々も次々とクルマを降りて路面を埋め尽くし車体の上に乗ってわんさかと歌い踊り出す。「ただもんの映画じゃないな」と面食らいましたよ、ええ。そして本筋に入ったかと思うとまたミュージカルが入る。
よほどチャゼル監督は(前作「セッション」に引き続き)音楽に密接した映画を撮りたかったらしいですなぁ。

実はチャゼル監督はもともとドラマーを目指していたことがあったそうです。その才能がない、と自覚し映画監督の道を選びました。そして「セッション」の成功で、長年温めていた企画であった本作の制作に取りかかることができたのです。

(C)Summit Entertainment, LLC

冒頭のハイウェイは「人生の困難さ」を暗喩しています。
「努力すれば報われる」と歌いつつ、前へ進めるクルマは一握り。
そしてラスト近くでの成功したミアは、夫と共にハイウェイの渋滞をすいと抜けだして横道をすいすい進めるという…。

プラネタリウムではミアとセブの空中浮遊しながらの歌とダンス。ここだけまるで夢のよう。それほどに愛し合っていた二人が結ばれず別々の道を歩んでいたという結末は本当に意外で、しかしミアは大女優に、セブは念願の自分の好きなジャズをやれる店を持てて、これはこれでお互い幸せを勝ち取ったハッピーエンドと言えるのでしょうか…。


ミアを演じるエマ・ストーンも、かつてはミアと同じようになかなか芽が出ない時期があったとのこと。演技に込める想いは格別だったに違いありませんね。セブを演じたライアン・ゴズリングは、数ヶ月間のピアノの特訓を経てセブ役に挑んだそうです。演奏シーンの手元のアップすら代役ではありません。大変な努力!

セブの音楽仲間であり、セブを「古いジャズを復興させると言うが、その先人たちも過去から脱却したろう?」と新しい音楽へ引き入れたキース役のジョン・レジェンドは、グラミー賞を受賞しているミュージシャンで、本作は映画初挑戦でした。また、「セッション」では恐ろしい教師役だったJ.K.シモンズも、場にそぐわない曲を勝手に弾いたセブをクビにするレストランオーナーの役で再度本作品に現われるので、ニヤリとさせられます。


それにしても大変な受賞歴です。アカデミー賞では史上タイとなる14部門にノミネートされ、6部門で受賞。チャゼル監督自身も、史上最年少の32歳で監督賞を受賞。世界中がこの新しい映画に魅了されたということなのでしょう。私もこんな映画を見たのは初めてでした。

・第89回(2017年)アカデミー賞…監督賞、主演女優賞、撮影賞、作曲賞、美術賞、主題歌賞
・第74回(2017年)ゴールデングローブ賞…最優作品賞(コメディ/ミュージカル)、最優秀主演男優賞(コメディ/ミュージカル)、最優秀主演女優賞(コメディ/ミュージカル)、最優秀監督賞、最優秀脚本賞、最優秀作曲賞、最優秀主題歌賞
・第73回(2016年)ベネチア国際映画祭…ヴォルピ賞(最優秀女優賞) 他多数

・2016年、アメリカ

・監督:デイミアン・チャゼル

・主演:エマ・ストーン、ライアン・ゴズリング、J.K.シモンズ、ジョン・レジェンド

・脚本:デイミアン・チャゼル

・撮影:リヌス・サンドグレン

・音楽:ジャスティン・ハーウィッツ

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