映画「シーフォーミー」感想

映画
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もし、あなたがひとり、雪に埋もれた屋敷にいたとしたら?

そこへ、金めあての強盗団が入り込んできたとしたら?

そして、もしあなたの目が見えないとしたら?

(C)SEE FOR ME FILM INC.

なかなか刺激的な映画でした。
それには3つの理由があります。

まず、見えない相手に対抗するため慣れない銃を持ち、スマホアプリで第三者に助けを求めながら敵を撃つ。
もし視覚障害がある場合、あなたにはそんな度胸がありますか。

そして、頼みの綱のスマホがついにバッテリー切れに。助けもなしに残り2人の強盗を倒せるかどうか。

さらに、主人公はいわゆる清廉潔白な「障害者」ではありません。富豪の家に潜り込むために猫の世話をするバイトに応募し、数千ドルの価値のあるワインを盗み出そうとする(しかも余罪あり)、まぁ、肝のすわった少女です。そんな彼女をラストまで見て許せるかどうか。これは微妙なところです。僕はモヤモヤした気分で映画館を出ました。

主人公のソフィーは、以前はU-18クラスのスキー滑降選手で上位10位以内に入る腕前でしたが、網膜の病気で視力をほとんど失いました。母親との関係も微妙になり、わざと電話を切るなど、かなり強がっている様子がうかがえます。
先ほど言ったワイン泥棒は、「あわれみや助けなどいらない」という強情さのひとつのあらわれなのかもしれませんね。あるいは、将来の見えないやや自暴自棄なのか。(障害者スキーへの登録の勧誘メールを読まずに削除したりしています。)

しかし、せっかく911(日本での110番)通報を受けて警官が駆けつけたのに、ソフィーは身の安全を守るため「自分はワイン泥棒もする悪党」と強盗団に印象づけ、屋敷にある数百万ドルの分け前をもらう約束をして命乞いをしていたのでした。そして警官は強盗に…。うーん、モヤモヤ。

そんなソフィーをスマホアプリ「シーフォーミー」で支援するケリーという女性は、もと軍人で今はFPS(ファースト・パーソン・シューティングゲーム)の達人です。
タバコを吸いにうっかり外に出て屋敷から締め出されたソフィーをうまく屋内へ誘導したケリーは、絶体絶命のピンチにおちいって再度助けを求めてきたソフィーを、時には落ち着かせ、時には強い口調で指示し、最初の強盗ひとりを射殺させることに成功します。

この時には、ソフィーのスマホのアウトカメラが外界をとらえており、ケリーのパソコン画面にはそれが映っています。
音声で「10時の方向へ」「もう少し左に」と指示を出すケリーに従い、ソフィーは相手に銃を向け、意を決して2発。まさにケリーが冒頭でやっていたFPSとそっくりでしたね。
わざと扉を半開きにしておき、「ここに隠れたか」と思った2人目の強盗が「いなかった…」と出てきたところをシュート! こんな作戦も、ケリーがいてこそ実行できたもの。

さらにケリーの有能なところは、「視覚障害者」「若い女性」「ソフィー」という単語だけでソフィーのSNSを特定し、警察に通報しているところです。さすがは軍人気質。

電池切れでケリーとの通信が切れ、あとは自分の耳だけが頼り。ひざをついたふりをして銃を手にしかけた3人目の強盗を自分の意思で射殺するソフィー。

最後に、ボスの男が現れます。壁にかけられた絵の裏に隠されていた、表に出せない数百万ドルを狙っていたのは、屋敷の主の元夫だったのでした。

彼を狙うために、最初に殺した男のスマホを手探りで操作し、「リダイヤル」と声をかけて着信音を鳴らさせて、それを標的に撃つ。
ここの場面には舌を巻きました。なんて機転が利くんだろう。

とどめが刺さってなかった元夫に絞め殺されかけたソフィーは、必死になってそばの鈍器で彼を殴り、殴り、殴り…。(暗転)

脚を撃たれて怪我をした彼女は、母親に「タバコはやめたわ。今から練習を始めればスキーの練習期日に間に合う」とほほえみます。「新しいスキー板を買わなきゃね。今あるのは4年前のだから」と語りかけるソフィーの母親。自分から「車いすを押して」と言い出すあたり、親子関係は修復できたのかな。

最初「シーフォーミー」でソフィーに屋敷の中を案内していた、もとスキー仲間の男とふたり、彼女はゲレンデに立ちます。スマホのビデオ通話で寄り添うケリーと共に。



サスペンスにあふれており、ゲーマーにも受けそうなネタを含む、佳作だと思います。それに、上映時間がわりと短い。17時50分に始まり、19時30分には外に出ていました。実質1時間半でしょうか。こわいものがあまり好きでない僕にはその点でも助かりました。
しかし、8月26日から公開されていて、今日僕が見た時はもう1日1上映で、しかも僕を含めて2人しか観客がいないというのは、どうなんでしょうね。もったいないな。



ソフィーを演じているスカイラー・ダベンポートは、視覚障害者の役者です。

「コーダ あいのうた」といい、海外では徐々に障害者役を実際に障害者が演じることが多くなっているようです。

日本でもこの秋から、障害者が登場するテレビドラマが3本ひかえているとか。
しかし、どれも健常者の有名俳優が演じるらしい。

日本にも、例えばろう者の劇団に本職の役者が多数いるようですし、このへんなんとかならないものでしょうかね。ポリコレとか関係なしに、まずゼロから1を積み上げるという意味で。



監督:ランドール・オキタ

主演:スカイラー・ダベンポート、ジェシカ・パーカー・ケネディ

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