東欧の架空の国クラコウジアからニューヨークのJFK国際空港へ着いたビクター・ナボルスキー(トム・ハンクス)。
ところが、そんな折に発生した母国の内乱騒ぎでパスポートが無効とされ、もちろんビザも発行されず、出国手続きで止められてしまう。
そしてビクターは、空港で1年間近くも暮らすはめになる。
…という、冷静に考えるとあり得ないけど、そんなファンタジックで心温まるコメディタッチなストーリー。
(じつは、なんと実際にそれに近い話があったらしいですけどね。事実は小説より奇なり。)
お金も持ってないのにどうやって生きていくの? そして英語もおぼつかないのに周りとうまくやっていけるの?
トラブル続きのなか、ビクターはどうやって生き延びるのか。
その奮闘する姿は見ていて笑えるし、ジーンと来ます。
なんと言ってもトム・ハンクスの名演技が光ります。
個性的なキャラだった「フォレスト・ガンプ/一期一会」の主人公とダブりますね。カタコトの英語をしゃべり、何事にも一生懸命なところが。
一方の、嫌味な空港責任者とのやりとりがおかしくて笑えます。
キャリアアップのためにはビクターが邪魔。なので密入国者に仕立て上げてFBIにでも逮捕収監してもらい、厄介払いしたい。
そんな彼のたくらみがことごとくスベって、「ざまあみろ」と思いました。
どうにかしてニューヨークに降り立つために、ビクターはさまざまな努力をします。
なぜ彼はニューヨークへ行くことにこだわるのか?
ヒントは、彼が大事に持っているナッツの缶の中身です。
何が入っているのでしょう? お楽しみに。
お金がない! 食べものも、クラッカーとケチャップとマスタードしかない!
まずは小銭をかせぎ、まずはハンバーガーを買います。
腹ペコのあまり、すごく美味しそうにかぶりつくのがほほえましい。
なにしろ国際空港なので、お金さえあれば食べものだけでなくなんでも買えます。
まずは、英語と母国語の旅行ガイドブックを購入して、ヘルメットのライトで英語を夜通し勉強。
とある仕事にありついて、ある程度お金が貯まったら、デートのためのスーツまで買っちゃいます。国際空港すごい。
はぐれ者ぞろいの下っ端職員たちと仲良くなり、しまいにはその友情の輪は空港の全店舗に広まります。
あちこちに貼られたビクターの左手のコピー用紙は、まるで権力に対抗する反体制派のシンボルマークのようでした。
最後には、インド人清掃員がみずからの逮捕・強制送還をいとわずに身を挺して彼をかばってくれるのなんか、いいですね~。
キャスリーン・ゼタ・ジョーンズ演じる国際線のフライトアテンダント、アメリアを、「時差ボケで体内時計が狂った尻軽女」呼ばわりだなんて、ちょっとひどいよね。
でも、美人で魅力にあふれていて、よかったな。たしかに半端なく男狂いなキャラけど。
空港責任者が、
「あなたのようにどんな男でも落とせるだろう女性が、なぜ彼にこだわるのですか?」
と質問するのに対し、アメリアが、
「あなたには一生分からないわ。」
と返すところには、思わずうなりました。
責任者にはまったく通じてない彼の魅力を、ここまで端的に表現するセンス。
素晴らしい脚本です。
故国の内戦が終わったため、目的を果たさずに故国へ送り返させられようとする。
でも、ビクターはニューヨークに行きたい。なんとしてでも行きたい。
出国ゲート前で、彼を取り囲む警備員たち。
しかし、彼らもいつの間にかビクターの仲間になっていました。
警備主任の優しさにホロリとさせられます。
名ジャズプレイヤーが本人としてカメオ出演しているのは最高ですね。
スティーブン・スピルバーグ監督、相変わらずいい仕事してます。
メインキャスト・スタッフの名前が、エンドロールで動くサインで描かれるのは、なにごともお役所仕事の出入国管理業務への皮肉みたいで、おかしかったです。
音楽はジョン・ウィリアムズが担当。
彼の曲といえば、「スター・ウォーズ」ほかでは金管楽器が大活躍しますが、この作品ではクラリネットが主役。おどけたファゴットの音色もあります。
ちょっと意外だったけど、いいですね。
ちょっと一息ついてあたたかい気分になりたいときに、おすすめの作品です。
U-NEXTで鑑賞。