感情の擬人化、という設定がおもしろい本作。
前作未見でも楽しめました。
主人公の少女ライリーは、どこにでもいるごく普通の明るくて優しい子。
彼女の心の中には、ヨロコビ、カナシミ、ムカムカ、ビビリ、イカリという5つの感情が住んでいます。
ヨロコビは、その中でも最も活発なキャラクター。
《私は優しい!》
ライリーのアイデンティティーは、幼いころからそうでした。
ヨロコビは、その自己肯定感を大事に育ててきたのです。
ある日のホッケーの試合でスカウトされ、友人と3人で2泊3日の合宿に行くことになりました。
ところがその前夜、彼女のインサイド=脳の中に変化が!
「思春期」の訪れをけたたましく知らせる警報が、脳内の管制室に鳴り響きます。
やってきた新しい感情は、シンパイ、イイナー、ダリィ、ハズカシの4人。
「もうライリーにあなたたちは必要ないの!」
ヨロコビたちを追放して、ライリーの心をあやつりはじめるシンパイたち。
彼らに制御されはじめたライリーは、虚勢を張ったり他人をうらやましがったり、人の顔色をうかがっては恥ずかしくて消えてしまいたい気持ちになったり。
そのうち、ライリーは自分に
《私はダメな子…》
というネガティブなレッテルを貼るようになってしまいます。
さあ、ヨロコビはシンパイからライリーを取り返し、彼女の自己肯定感を取りもどすことができるでしょうか??
いまさらCG映像のすごさを語っても仕方がないので、物語に焦点を当てましょう。
ありますよね、周りの目を気にして急に不安になり、どうすればいいのか分からなくなることって。
特に思春期に入りたてのころは、自立心が目覚めるのと同時に周囲との距離感が取れなくなって、「しんぱい」で落ち着きがなくなったり、「いいなー」と人をうらやんだり、「ダリぃ」と投げやりになったり、「恥ずかしい!」と消えてしまいたくなったり。
これは私たちが大人だからこそ懐かしく思い出される感想です。
あこがれの先輩選手に気に入られたい、と頑張るライリーをあやつるのは、シンパイのしわざ。
アイスホッケーの試合が佳境にさしかかるのと同時に、シンパイがどうすればいいのか分からなくなって感情の制御盤をめまぐるしくいじり倒すシーンは、見ていて痛々しくなるほどでした。
そんなシンパイの手を、ヨロコビは優しくさすってやります。
ライリーの《私はダメな子》結晶を、9人の感情全員が力を合わせて引っこ抜くところがクライマックス。
無事に帰宅して、ママから合宿の感想を訊かれたライリーが、ダリィの感情で「べっつにー」とうそぶく。
ママとパパの「インサイド」にも感情キャラたちがいて、「何いまの態度!」と怒ったりあわてたりするのも楽しいです。
あと、カナシミとハズカシが協力し合うのも親近感を覚えました。なるほど、そのペアかぁ。
2度も現れる「ナツカシ」は、老婆の姿です。「アンタはあと50年経ったら出てくればいいから!」と扉の奥へ押し返されました。もう心の中にナツカシを飼いならしている私たち大人にとっては、ちょっとだけ面はゆい感情です。
ついついナツカシに頼ってないで、ヨロコビとともに生きたい、としみじみ思いました。
映画.comの記事によると、本作の世界累計興行収入は15億5506万ドルを突破し、歴代興行収入ランキング10位に入りました。
アニメーション映画としては、「アナと雪の女王」などを抜き、史上最高記録を更新し続けています。
字幕版上映もあるようですが、私が見た広島バルト11にはかかっていなかったし、こういうめまぐるしい内容だと、吹き替え版で見る方がいいと思いますね。
要所要所の単語は日本語で書かれているし。
(上映する国によって映像を差し替えるテクニックはすごいですね! ディズニー&ピクサーの世界規模の展開力を実感しました。)